理学療法士のハルです。
今回は、臀部の痛みの原因の1つである「梨状筋症候群」について分かりやすく解説します。
この記事は3人の患者さんのために書きました
※記事を読む前に※
お尻の後ろ側。この赤い棒の辺りに痛みがある方や足にしびれのある方が梨状筋症候群の可能性がある方です。
「梨状筋の正しいストレッチのやり方」を知りたいという方は↓↓
梨状筋とは?
梨状筋症候群ということは梨状筋という筋肉が関わっているのでしょうか?
はい。梨状筋症候群は梨状筋が原因で起こります。
梨状筋という筋肉は読んで字のごとく果物の梨(なし)のような形をしている事が由来の筋肉です。
梨状筋症候群の前にまずは梨状筋という筋肉からみていきましょう。
梨状筋の場所はどこ?
梨状筋の場所についてです。
左側の図は人間のお尻を後ろから見たものになります。
右側の図は大殿筋というお尻の表面の筋肉を取り、お尻の奥をみた図になります。
梨状筋は大殿筋というお尻の表面にある大きな筋肉に覆われていますので体の表面から触れる事が出来ません。
ですが、大殿筋の上からお尻を押すとコロン、コロンと梨状筋の硬さが分かります。
気になる方は自分のお尻を触って奥にスジみたいなものを感じたら梨状筋かもしれません。
梨状筋が付く場所
梨状筋は、仙骨という逆三角形の骨と大腿骨と呼ばれる足の骨にある大転子と呼ばれる所にくっついています。
梨状筋は股関節周りに付く筋肉となりますので股関節を動かす時に働く筋肉となります。
梨状筋の作用(働き)とは?
梨状筋という筋肉が働くと下の図のように足を外側に開く股関節の外旋(がいせん)運動になります。
逆に、足を内側に入れる股関節の内旋運動では梨状筋は引き伸ばされる(ストレッチ)ことになります。
足を内側に向けるとお尻のツッパリ感や痛みが出る方がいらっしゃるかもしれません。
そのような症状がある方は梨状筋が硬くなっている可能性があります。
梨状筋症候群とは?
梨状筋は通常は柔らかい筋肉です。
しかし、負担がかかることで硬くなったり、引き伸ばされてしまうことでお尻の痛みが出現します。
また下の図にあるように梨状筋の近くには坐骨神経が通っており、梨状筋が硬くなったり引っ張られてしまうと坐骨神経が圧迫されてしまい臀部や足のしびれが出現します。
このように梨状筋が原因で臀部の痛みや足のしびれが生じることを梨状筋症候群と言います。
梨状筋症候群の原因
梨状筋症候群の原因としては論文などで様々に報告されています。
まず多く報告されているものとして臀部・股関節の打撲や脊椎・末梢神経手術の既往、慢性の刺激が多いとされています。
しかし、この病気の発症原因として明らかな原因となるのは約3~4割程度とされており日常生活の中で発症しているとされています。
実際に私が梨状筋症候群の患者さんと出会う際に感じる事は、デスクワークなどの長時間の座位をとっている方が多いです。
おそらく慢性の刺激というものが、長時間の座位などに当てはまるのではないかと思います。
梨状筋症候群の悪化動作
梨状筋症候群の悪化動作としては臀部の圧迫を受ける座位が多いとされています。
また、歩行時にはあまり疼痛を感じないと訴えることが多いとされています。
私自身の印象としても長時間の座位姿勢をする患者さんが多いという印象です。
30分に1回くらいは立つなどして姿勢を変えることが大切かと思います。
梨状筋症候群の診断
ここでは梨状筋症候群の診断について話をさせて頂きます。
①梨状筋症候群の診断 画像診断(MRI・CT・エコー)
MRIやCTなどの画像で坐骨神経の圧迫をとらえる事は困難とされています。
過去の報告でも骨盤部のMRIにおいても梨状筋の筋肥大は認められなかったとされています。
しかし、近年では超音波を用いて梨状筋を描写したと報告があります。
超音波を用いることでより正確に梨状筋を確認できるとされています。
そのため超音波を使用した梨状筋のブロックは的確かつ比較的安全に行えるされています。
※超音波(エコー)に関しては病院によって取り扱っている所とそうでない所があると思います。また超音波を使用してのブロック治療もやっている場合とそうでない場合があります。
気になる方は一度かかりつけの病院へご確認いただければと思います。
②梨状筋症候群の診断 電気生理学的検査法(SSEP)
通常の神経伝道速度や針筋電図では異常と認めることは困難とされているようです。
しかし、多くの報告として挙げられているのが、体性感覚誘発電位(SSEP)という検査方法です
。この検査方法を用いる事で90%前後の信頼性の高い診断も可能と報告されています。
※この検査法も病院によって行っている所とそうでない所があると思いますので病院へご確認ください。
梨状筋症候群 整形外科的テスト
一般的に行われている整形外科的テストになります。
FAIRテストとPaceテストの2つは梨状筋の緊張を高め坐骨神経への圧を高める誘発テストとして報告されていますが、いずれも正確性は高くないとされています。
しかし、書いたことと矛盾してしまうかもしれませんが、私自身はこのような整形外科的テストも組み合わせて総合的に判断し治療していくことが大切と思っています。
〇FAIRテスト(Fribergテスト)
〇Paceテスト
〇坐骨神経圧痛
腰椎疾患との鑑別
梨状筋症候群と間違えられやすい病気としては腰椎椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患が挙げられます。
通常、ヘルニアなどで圧迫された神経は、その神経の領域に応じて筋力低下や感覚鈍麻が生じます。
しかし、梨状筋症候群の場合は痛みはあっても筋力低下や感覚鈍麻は少ないとされています。
また、梨状筋症候群の痛みの特徴としては臀部圧迫を受ける座位姿勢が多く、歩行時には疼痛をあまり訴えないことが多いともされています。
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まとめ
今回は梨状筋の場所や働き、梨状筋症候群の原因・診断についてお話しました。
梨状筋症候群は確定診断が難しいともされるため様々な検査等を行い、診断を受けることが大切になるかと思います。
最後までありがとうございました。
引用・参考文献
鷲尾 和也:梨状筋症候群
斎藤 貴徳:梨状筋症候群の診断と治療
坂本 武郎、帖佐 悦男:FAIR test(Freiberg test)
「お尻の痛みで違う原因を知りたいという方」は以下のブログを参考にしてみてください。
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