腰部脊柱管狭窄症の診断 間違いやすい病気は何か?| 理学療法士が説明

腰部脊柱管狭窄症の診断 間違いやすい病気とは?

理学療法士のハルです。今回は、「腰部脊柱管狭窄症の診断 間違いやすい病気は何か?というテーマでみなさまにお話します。

ハル

この記事は2人の患者さんのために書きました。

腰部脊柱管狭窄症の診断について知りたい方

腰部脊柱管狭窄症と診断を受けたが本当に合っているのか疑問の方

目次

腰部脊柱管狭窄症の診断

腰部脊柱管狭窄症 診断 どうする?
ハル

今回は、腰部脊柱管狭窄症の診断について説明していきます。
主に問診、身体診察、画像所見について説明していきます。また、腰部脊柱管狭窄症と間違いやすい病気についても説明します。

問診

腰部脊柱管狭窄症に限った話ではありませんが、まずは問診が大切になります。

何故かと申しますと、腰部脊柱管狭窄症は特徴的な症状があるからです。

それは「神経性間欠跛行」と呼ばれる症状です。

安静時には症状がないかあっても軽微であり、立位や歩行の継続によって下肢の痛みや痺れが増強して歩行困難となります。

しかし、短い休息によって再び歩行可能となります。

腰の伸ばして立っていたり、歩くことによって症状が出現しやすくなりますが、前かがみの姿勢や座っている時では症状が軽減します。

ではなぜ前かがみの姿勢や座った時に症状が緩和するのかを図で確認してみましょう。

まずは腰を伸ばした時の脊髄の状態を見てみましょう。

腰部脊柱管狭窄症 伸展 脊柱管狭窄になる

腰を伸ばすことで脊柱管と呼ばれる神経の通り道が狭くなってしまいます

次に、腰を曲げた時はどうなるでしょうか?

腰部脊柱管狭窄症 脊柱屈曲 脊柱管拡大

このように腰を曲げると脊柱管と呼ばれる神経の通り道が広くなるため症状が緩和しやすいのです。

身体診察

身体所見では、まず体の曲げ伸ばしやkempテストと呼ばれるテストを行い、症状の有無を確認します。

腰部脊柱管狭窄症 体幹前屈

特に体を反った時やkempテストと言われる体を反ってから捻る動作を行った時に足に症状が出現しないかの確認が必要です。

(医療者のために)

kempテストでは、L4/5の腰部脊柱管狭窄症では、L5神経根障害では60.8%、L5/Sの椎間孔狭窄によるL5神経根障害では79.6%で陽性であったと報告とのがある

腰部脊柱管狭窄症 体幹伸展

以前のブログでお話した、神経根型の腰部脊柱管狭窄症の場合では、体を反って足に痛みや痺れが出る場合がありますので確認が必要となります。

腰部脊柱管狭窄症の神経根型が分からないという方は」こちらのブログを参考に↓↓

体の曲げ伸ばしの検査をしたら次に問診で聞いた歩行負荷を行い、所見をとります。

これは先程申し上げた「神経性間欠跛行」をみるために必要な事です。

歩行負荷を行い、足やお尻のしびれ、痛みなどが出現するかどうかを確認します。

また、休憩したら再度歩けるようになるかどうかの確認が必要です。

画像所見

腰部脊柱管狭窄症 画像診断 MRI

腰部脊柱管ガイドライン2021では

腰部脊柱管狭窄症の画像診断には非侵襲的なMRIが最適である

とされています。

しかし、MRIで腰部脊柱管狭窄症があっても必ずしも症状があるわけではないとされています。

そのため、腰部脊柱管狭窄症では、症状から診断を優先すべきであり、画像検査などの各種検査は補助診断にすぎないとしています。

腰部脊柱管狭窄症と間違いやすい病気 末梢動脈疾患について

大島らは、

腰部脊柱管狭窄症の症状として神経性間欠性跛行は特徴的であるが、末梢動脈疾患(PAD)によって引き起こる血管性間欠跛行との鑑別が重要である

としています。

末梢動脈疾患とは主に下肢などの血管が狭くなり、血液が正常に流れなくなる病気のことを指します。

腰部脊柱管狭窄症が姿勢の変化や立位によって症状が出現するのに対し末梢性動脈疾患では姿勢とは関係せず、立ち止まるだけで症状が軽減するという特徴があります。

また、末梢性動脈疾患では、血管の流れが悪くなるため足背動脈などの足部の血管の拍動を感じられない可能性があります。

末梢動脈疾患 足背動脈触知 困難

ここからは末梢性動脈疾患と腰部脊柱管狭窄症による間欠性跛行の鑑別診断を一覧でみていきましょう。

スクロールできます
鑑別項目血管性間欠性跛行神経性間欠性跛行
跛行距離一定変化する
症状の軽快・消失立位の休息でも座位あるいは前屈
軽減・消失までの時間早いゆっくり
自転車症状出現なし
下肢の動脈拍動触知なしあり
筋力低下・筋委縮なし時にあり
大島らの鑑別診断より一部改変

これらに加え足関節上腕血圧比(ABI)を測定するなどして診察所見と合わせて鑑別診断することが重要とされています。

腰部脊柱管狭窄症ガイドラインでは

足背動脈の触知不良で、足関節上腕血圧比(ABI値)が低く、ブロック治療に反応が乏しい患者では閉塞性動脈硬化症の危険があるので注意を要する。また、両者が合併することもあるため留意する

と報告されています。

腰部脊柱管狭窄症と症状が似ているけど、何か違う病気の気もするな?という場合は末梢性動脈疾患にも注意が必要かもしれません。

まとめ

今回は腰部脊柱管狭窄症の診断、間違いやすい病気について話をさせて頂きました。

腰部脊柱管狭窄症も問診や身体所見をとり、画像所見とあわせて総合的に診断していく必要がある病気と思われます。

また、今回は腰部脊柱管狭窄症と似た症状を持つ末梢性動脈疾患についてもご紹介させて頂きました。

ハル

いつも最後までお読み頂きありがとうございます。

引用・参考文献

・渡辺 和之:腰部脊柱管狭窄症

・腰部脊柱管狭窄症 ガイドライン2021

・佐藤 公昭ら:腰部脊柱管狭窄症と末梢動脈疾患の自覚症状

・大島 正史ら:腰部脊柱管狭窄症の診断と治療

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