理学療法士のハルです。今回は、「腰椎椎間板ヘルニアとは? 原因・分類・症状」というテーマでみなさまにお話します。
この記事は2人の患者さんのために書きました。
腰椎椎間板ヘルニアとは? 髄核や繊維輪について
病院で腰のMRI検査をしました。ヘルニアが出ていると言われたのですが、これが私の腰痛の原因でしょうか?
MRI画像検査などで腰椎椎間板ヘルニアの指摘を受けたのですね。
画像検査でヘルニアがあって痛い人もいれば痛くない人もいらっしゃいます。
ヘルニアによる痛みなのかどうなのかを一緒にみていきましょう。
腰椎椎間板ヘルニアとは椎間板組織である繊維輪(せんいりん)や髄核(ずいかく)が外へ飛び出し神経を圧迫する病気のことをいいます。
横から見たものです
そもそもヘルニアとは? 言葉の意味
ヘルニアとは、身体の一部があるべき場所から出てきてしまった状態の事をいいます。
ですので、ヘルニアは腰椎椎間板ヘルニアだけではありません。
一般的に言われている「脱腸」もヘルニアの1つとなります。脱腸は本来ならお腹の中にあるはずの腹膜や腸の一部が鼠径部から飛びでてくる病気であり「鼠経(そけい)ヘルニア」と呼ばれます。
ですので、腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板の中にある「髄核」が飛び出してきてしまった状態をいいます。
動画にて確認できます↓↓
腰椎椎間板ヘルニアの原因と疫学
一般的には、重たいものを持ち上げたり、くしゃみなどで急に発症することがあります。
また、腰椎椎間板ヘルニアは20~30代の男性の方が高いとされています。
男性は事務職よりも重労働者(運転手、金属・機械業労働者)の方が発症リスクは3倍、女性は職種よりも仕事量がリスクとなっていると報告があります。
ヘルニアの患者さんで多かったとされているのが、腰椎の椎間関節の可動域が異常に大きいことが挙げられています。(約13%)
ですので、体幹トレーニングを行い腰椎周囲の安定性を得ることが予防として大切になってくると思います。
最後に、スポーツとヘルニアの関連ですが、スポーツの影響は示されていないとされています。
ヘルニアが起こりやすい場所
20代~40代ではL4とL5間のヘルニア(L4/L5ヘルニア)が多いとされており、それよりも年齢があがるとL4/5よりも上位のヘルニアが多くなるとの報告があります。
ヘルニアの形態分類(Macnabの分類)
分類の説明をするにあたり言葉や図がイメージしにくいと思いますので、もう一度腰椎の解剖の図を載せます。(大切な場所は赤で印をつけています。)
では分類に移ります。 ヘルニアは4つに分類されています。
①膨隆(bulging type):髄核の突出はあるが、繊維輪の一番外側の層を突き破っていないもの
②突出(protrusion type):脱出した髄核が繊維輪を破っているが、後縦靭帯は破っていないもの
③脱出(extrusion type):髄核が繊維輪と後縦靭帯を破り、脊柱管内に露出しているが、中央椎間板との連結は保たれている。
④分離(sequestration type):追加苦が繊維輪と後縦靭帯を破り、脊柱管内に脱出し、中央椎間板とは完全に遊離したもの。
この分類は予後予測で非常に大切になるものです。今回は割愛しますが、この分類でどのような予後予測が出来るかを今後のブログでご紹介する予定です。
ヘルニアの症状
腰椎椎間板ヘルニアによる症状は、痛み、しびれ・感覚鈍麻、筋力低下が挙げられます。
痛み
腰痛だけではなく、ヘルニアの場合は特に下肢への痛みが出現します。この痛みはデルマトームに沿った痛みで出現しやすいです。デルマトームについては次の感覚鈍麻、しびれの所で説明します。
また、体を前に曲げたり、後ろに反ると下肢への放散痛が生じることがあります。
感覚鈍麻、しびれ
ヘルニアの場合には神経の領域(デルマトーム)にそっての痛みだけでなく、感覚の鈍麻やしびれが生じます。
例えば、L4/5のヘルニアがあるとします。
その場合、L5の神経根に問題が起こりやすいです(※L4に問題が出ることもあります)
L5であれば濃い緑で示されている、膝から親指あたりに痛み、感覚鈍麻、しびれが生じやすいです。
ですが、必ずしもその場所に出現しない場合もあります。
筋力低下
ヘルニアがあると神経根に応じたレベルで筋力低下が起こります。
例をあげますと…
L4神経根の障害であれば、大腿四頭筋と呼ばれる膝を伸ばす筋肉の筋力低下。
L5神経根の障害であれば親指やその他の指を上に反らす筋肉の筋力低下。
S1神経根の障害であればつま先立ちをする筋肉の筋力低下。
このようにヘルニアによって神経根が障害されますと、その神経が支配する筋肉の麻痺が起こります。
このような麻痺症状が出現した際には速やかな病院受診をお勧めします。
まとめ
今回は腰椎椎間板ヘルニアの原因、分類、症状を話させて頂きました。
特にデルマトームに沿って痛みや痺れ、それに足の筋肉に麻痺などがある際には病院受診をお勧めします。
今度もヘルニアのことについてどんどんアップしていきます。
「腰椎椎間板ヘルニアはどのような検査を行い、どのように診断するのか」知りたい方は↓↓
引用・参考文献
・岡村 良久、原田 征行 他:腰椎椎間板ヘルニアの保存的治療法とその適応
・大矢 卓、白土 修:腰椎椎間板ヘルニアの病態と治療
・腰痛診療ガイドライン2019
コメント