理学療法士のハルです。今回は、「筋筋膜性腰痛」について説明させて頂きます。
筋筋膜性腰痛と呼ばれていますので、その原因は筋肉と筋膜にあります。
今回はそのうちの1つである筋膜について分かりやすく解説します。
この記事は4人の患者さんのために書きました
※記事を読まれる前に※
今から説明する筋筋膜性腰痛の場所は赤〇で示している場所辺りです。
筋筋膜性腰痛 ~筋膜編~
筋筋膜性腰痛というくらいだから、筋肉が原因の腰痛でしょうか?
はい。主に筋肉と筋膜による痛みを指しています。
今回は筋膜の方を説明させて頂きますね。
筋膜とは何か?
筋膜(fascia、ラテン語の「帯」に由来)という用語は、本来であれば筋肉や腱、骨、血管、神経を覆い、連結し、包んでいる組織を意味します。
しかし、世間一般で表される筋膜は筋肉を包んでいるものとして扱われています。
この記事でも筋膜は筋肉を覆っている膜として書きます。
筋膜の構造
筋膜は包んでいる筋の束によって筋膜の名前が変化します。
- 筋外膜:一番その側の膜
- 筋周膜:筋繊維の束を包んでいる膜
- 筋内膜:個々の筋繊維を包んでいる膜
次の画像は皮膚から筋肉に向かう層の断面図です。
先程、挙げた筋外膜、筋周膜、筋内膜とは別に浅筋膜、深筋膜と呼ばれる筋膜があります。
治療の際にターゲットとなるのはこの浅筋膜、深筋膜という筋膜になります。
筋膜の役割
筋膜は全身を張り巡らせています。その役割は
①筋肉に力が入る際に、隣の筋肉に摩擦が起こらないように滑らかにして運動を円滑にする。
②筋肉が働いたときに筋肉が腫れ過ぎないように筋肉を締める働きがある。
③姿勢と運動のコントールに重要
浅筋膜
・皮膚と深筋膜の間にある膜。全身を表面的に覆っている膜。
・2層から成るとされ外層は脂肪層、内層は脂肪を含まない薄い膜。
深筋膜
・筋肉を包んで分離し、神経と血管の為に通り道を形成する。
・関節周囲では靭帯を形成したり強くする。
筋膜に痛みが生じる理由は?
・筋膜はボディスーツのように全身を覆っています。そして、筋膜には痛みを感じとる侵害受容器が多く存在します。
・この侵害受容器は筋膜だけでなく皮膚・関節・内臓などあらゆる部位に存在します。
・しかし、筋膜はいつも痛みを感じるわけではありません。どのような時に筋膜が痛みを感じやすくなるかと言いますと、使い過ぎ(overuse)や外傷があげられます。
筋膜と腰痛の関係は?
・筋膜はボディスーツのように全身を覆っています。
そのため筋膜が原因で腰痛が出現する場合、関節のように局所の痛みではなく腰全体の痛みとして表現する事が多いです。
・また筋膜に腰痛が生じた場合、筋膜の動きが悪くなった時などに症状が出現するため、常に症状が出現するとは限りません。
腰の筋膜はどこにあるのか?どこが痛いのか?
では次に腰の筋膜はどこにあるのか?どこに痛みを感じやすいのかをみていきます。
まずは多裂筋(たれつきん)と呼ばれる筋肉です。
この筋肉は背骨近くの奥深くにある筋肉です。多裂筋は腰椎と呼ばれる骨についていますが、その周りで痛みが生じることが多いです。
次は、最長筋(さいちょうきん)と腸肋筋(ちょうろくきん)と呼ばれる筋肉の間です。
ここも痛みが出現しやすい場所となります。
最後は腸肋筋です。先ほどは、最長筋と腸肋筋の間でしたが今回は腸肋筋の外側です。
ここも筋膜を治療する際のポイントとなる場所です。
筋筋膜性腰痛の診断
筋筋膜性腰痛でも問診や触診、運動検査などを複合的に行い診断していくのが基本になる思われます。
①問診
いつから痛いのか? なぜ痛くなったのか? 疼痛が強くなる姿勢の確認など
②触診
腰の筋肉や筋膜に圧痛があるか
③運動時の痛み
筋肉を収縮させたときの痛み(ギュッと詰まるような痛み)
筋肉を伸ばした時の痛み(突っ張るような痛み)
③長時間の同一姿勢での腰痛確認
長時間の同一姿勢(座位、立位など)で腰痛が出現するかの確認
④エコー画像による確認
このように複合的に検査を行い診断していきます。
まとめ
筋筋膜性腰痛の筋膜に着目して説明させて頂きました。
筋膜は全身を覆っており、痛みを感じる受容器が多いことを説明させて頂きました。
そのため腰痛を感じるときは腰全体を痛がる方が多いです。
最後までお読みいただきありがとうございました
引用・参考文献
鈴木 茂樹:エコーガイド下 Fascia リリースの治療効果
水村 和枝:筋・筋膜性の痛みにおける神経栄養因子の働き
「筋膜ではなく筋肉と腰痛の関係について知りたい」という方はこちらの記事をどうぞ
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